国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫・国際感染症センター長のコメント↓
――というわけで、やはり怖い病気です。感染した8割は元気だけれど、2割は入院が確実に必要、5%は集中治療室に入らないと助けられない。
東京都のコロナウィルスの入院患者のためのベッド数は4000床まで増やそうとしているみたいですが、現在は500床で、すでに定員オーバーだということです。つまり、2割の「確実に入院が必要な患者」でも今は入院できないので、今コロナウィルスに感染すると、重症化する可能性がぐっと上がるというわけです。こればっかりはベッドの準備や、治療法の確立を待つしかありませんが、一つ確かなことは――それまでは絶対に感染しないように、万全の対策を取らないといけないということです。
さて、ウィルスそのものも怖いですが、こうも生活リズムが変わり、また、社会不安のある状況では、ストレスにも気をつけなければいけません。選手には特に知ってほしいのは、ストレスがたまったときに、人間は怒りっぽくなるということです。今日は、メンタルケア心理士として、ちょっとお話しします。
人間が本能のままに動かないのはなぜかというと、脳の前頭葉という部分が、本能を抑え込んでいるからです。皆も酔っ払いは、一度は見たことがあると思いますが(え、毎日見てるって? まぁ、それは大目に見てあげて!)、あれは、酒に含まれるアルコールが、前頭葉の働きを鈍くするからなのです。だから酔っ払うと理性が働かなくなって、本能のままに行動してしまうんです。
さて、この前頭葉ですが、これも実は、視床下部(シショウカブ)という場所がその動きの強さをコントロールしています。視床下部は、言うなれば脳と身体の調節係です。しかし困ったことに、この調節係、ストレスに弱いのです。ストレスがかかると、ちゃんと調整命令が出せなくなってしまいます。
視床下部が調整命令を出せなくなると当然、前頭葉の動きも、鈍くなったり、過剰になったりします。前頭葉がしっかりコントロールされているうちは、怒りなんかも制御されるのですが、その命令が出ないと、怒りも制御出来なくなってしまいます。これが、ストレスがかかると怒りっぽくなる理由です。
そしてまた、前頭葉は人の顔・表情を見ているときはとても優秀に働くのですが、そうでないときは、ちょっと動きが鈍くなります。ネットは顔が見えないコミュニケーションが多いですよね? ついつい、普段言わないような過激なことまで言ってしまう、書いてしまう、そんな経験したことありませんか? それは実は、前頭葉の動きが鈍い中でコミュニケーションを取っているからなんです。前頭葉の、「相手を思いやる」という理性が働きずらくなっているんです。
まとめると、前頭葉はストレスによって動きが鈍くなり、また、相手の顔・表情が見えないコミュニケーションでは働きずらい、ということです。このことを知ることによって、皆が少しでも、「じゃあどうすればいいか、何に気をつけようか」と考えてくれれば嬉しいです。
ストレスへの対処法ですが、これは案外シンプルです。「生活リズムを整える」、「睡眠をしっかり取る」、「食事をバランス良く、しっかりとる」というこの3本柱、それに加えて適度な「運動」、これでストレスを上手く逃がすことができます。
最近イライラしてるなぁ、なんか気分が落ち込むなぁ、など、多くの悩みの原因は、視床下部がストレスで弱っているせいだったりします。生活リズムを整えて視床下部を助けてあげること、これがとても大事です。
今日は少し硬い話(?)になりましたが、こういうことを、「知っている人生」と「知らない人生」、少しずつ違ったものになると思います。知識を増やしたり、感性を磨いたりすることは、サッカー選手としても決して無駄なことではないですよ。