伸びてくる選手というのは、その気配というか、予兆というのが、色々な場面で見えてくるものです。友達との会話、歩き方、立ち居振る舞い全般――ある程度一緒にボールを蹴った仲であれば、サッカーをしなくても、その選手の状態がわかってきます。
さて今日は、そんな「伸びる予兆」というのは、こういうものなのです、という動画をこっそり撮ったので、こっそり共有したいと思います。まず、動画です↓
何てことはない、練習前の準備の映像です。たった20秒。6月時点では、彼は率先して準備をするタイプではありませんでした。それが9月に入り、練習の40分も前に来て、一人でどんどん準備を始めるようになりました。注目してほしいのは、最初のところです。――走っていますよね。ジョギングでマットを準備しています。歩いても良いはずですが、彼は走っているのです。ここに、この選手の大きな成長が見えます。誰に言われたわけでもなく、自分で、自分が良いと思ったことを躊躇いなくやる。
さて、ではこの選手、実際のプレーの方はどうなのか。実際のところ、このひと月で、もっとも急激に伸びてきている一人です。最初のボール操作/テクニックのドリルを、自分からやりにきているのです。それは周りの選手にも伝わっていて、チームメイトが彼に向ける視線・態度がかわりました。自分で自分の居場所を作る、とはこういうことなのだな、という良い例になっています。
準備のために早く来い、と言うわけではないのです。それぞれ学校があり、行き帰りの時間も違います。注目しているのは、「何分前に来た」とかそういうことではなく、その選手の「内面」です。
『となりのトトロ』で有名な宮崎駿監督はドキュメンタリーの中でこんなことを言っていました。「’頑張’るのは当たり前なんだよ。頑張ってもダメな人間が累々といるとこが我々の仕事なんだから。頑張るなんてことを評価するなんてとんでもない間違いですよ。頑張ってなんてそんなもん、頑張んないと話になんないじゃん。それで眠れない夜を過ごすのよ。その時に、励ましとか慰めなんて何の役にも立たないことが分かるよ。全部、自分ですよ。自分が自分で許せるか。その時に自分が簡単に許せる人と、簡単に許せない人物がいて、それによって運命が変わってくるんですよ。自分ですぐ自分を許せる人間は大した仕事をやらない」
「上手くなろう」とする選手は、言い換えれば、「自分で自分を許していない」選手です。だから、上手くなれる。何かをつかみたい、と本気で思い始めた選手は、行動が変わってきます。準備、挨拶、立ち居振る舞い、目の輝き、ふとした時の表情――。今回の動画の選手の他にも、グっと伸びてきている選手がいます。しのぎを削ってほしいと思っています。