「罵り合い」や「喧嘩」、ネットでは「炎上」なんて言ったりしますが、これの発生率、対面でのコミュニケーションとネット環境を利用したPC間での文字だけのコミュニケーションでは、全く違うということがわかってきています。全発言数に占める「炎上」割合について、以下のことが判明しています。
対面のコミュニケーション:0.21%
PC間コミュニケーション:4.72%
と、なんとPC間での「炎上」確率は対面のコミュニケーションに比べて、22倍も高いのです。今日はこれの理由を、ちょっと書いていこうと思います。
人間には自分に関する意識として、自己意識というものがありますが、この自己意識にも種類があります。「私的自己意識」と「公的自己意識」といって、簡単に言うと以下のようなことです。
私的自己意識:自分自身の感情や価値観などに対する意識。
公的自己意識:他者からどう見られているのかについての意識。
対面のコミュニケーションだと、相手の顔が見えていて、相手に見られている状態なので、「公的自己意識」が強く働きます。自分の言動によって、「相手はどう感じるかな」「相手は自分をどう思うかな」などの意識が、自然と出てきますね。これが「公的自己意識」です。
一方PC間のコミュニケーションでは、自分が情報を発信する先の相手に見られていないので、「私的自己意識」に自分の注意が多く注がれて、「公的自己意識」が低下します。そうなると、自分の感情や価値観を、相手の事情や感情に配慮せず押しつけてしまうがちになります。それが、「炎上」が多くなる原因です。
またこれ、「炎上」というとコミカルに聞こえますが、言うなれば「罵り合い」ですから、決して楽しいものではありません。しかも人間は、怒ったり罵ったりするのに大量のエネルギーを使います。その瞬間は、脳の中で快楽物質が出ているためスカっとしますが、その後冷静になった後感じるのは、後悔や不安です。
「あんな風に言ったけど、気にしてないかな」「自分の言ったことが、心の傷になったんじゃないかな」などです。その不安を払拭するために脳はこれを「忘れよう」「なかったことにしよう」とするのですが、その無理な「忘れ」をするためにも身体は膨大なエネルギ-を使います。つまり、大量のストレスを無意識に抱えることになるのです。
「炎上」、いいことなしですね。膨大なエネルギーを使って他人を不快にさせ、しかも自分にストレスを溜め込むだけの行為――なんて不毛な、と思います。どうせエネルギーを使うんだったら、自分にとっても、相手にとってもためになるように使っていきたいですね。